ヘンリック・フィスカー産まれの兄弟、アルテガGTを撮った [2]

この前はアルテガGTを書いたけれど、それの続編!
前の記事はこちら:ヘンリック・フィスカー産まれの兄弟、アルテガGTを撮った [1]

皆、アルテガGTというとどんなイメージがあるだろう?
私の場合、特にイメージは無かった。あるとすれば、いっときの春の風の様に過ぎ去っていたものって感じかな。頬に温かく、ほんの一瞬だけど思い出すと心地良い感じのさ。
そんなふんわりとしたイメージしか持っていなかった車を実際に見てみると、細部への拘りが胸に響いてとても魅力的だった。もっと長い時間眺めていたい。

アルテガGT、そう言えばエンジンは何を載せているのだろう?実は、フォルクスワーゲンから提供された6気筒エンジンが使われている。トランスミッションもフォルクスワーゲンの6速DSGだ。なんだVWか特徴がないと思うかもしれないが、ちょっと待って。ロータス・エキシージのエンジンは何だろう?それを考えれば、フォルクスワーゲン製のエンジンとトランスミッションであることをあまり気にかける必要も無いだろう。
そのエンジンだってVR6エンジンだ。このVR6エンジンは「狭角V6エンジン」とも呼ばれていて、つまり早い話が四分の一ヴェイロンだ。どうしても長さが必要になる直6エンジンのシリンダーとピストンを互い違いに配置して長さを短くしたコンパクトな6気筒エンジンで、VR6を連結したものがW12、2気筒カットした物を横に繋げたものがW8エンジンになり、それを連結したものがW16エンジンになる。ヴェイロンやベントレーと血を分かつエンジンだなんてどこか夢があるし、更にテクノロジー面でも魅力あるエンジンだと思う。アルテガGTはVR6エンジンをリアに搭載した唯一の車だろう。

さて…今回はエクステリアデザインの個人的ピークであるドアからリアの造形から見てみよう。

アルテガGTのエアインテーク

アルテガGTのエアインテーク

程よく筋肉質で妖艶で美しい…。ドアにまでエアインテークのデザインが引っ張られていると言うより、ドアから続くデザインの終端がエアインテークと言った方が適切かもしれない。どれだけ手間がかかっているのだろうか。
他のリアエンジンの車両はどうやってエアインテークを処理するのだろう?

PORSCHE Cayman(987)

PORSCHE Cayman(987)

MRの身近な車両と言えばケイマン。アルテガGTを見た後に見るとかなりシンプルで平坦に見え、空気が入ればそれで良いかのような控えめな雰囲気。デザインにおいての重要なポジションにはあまり思えず、どちらかと言うと溶け込ませる方向だろうか。

PORSCHE 718Cayman(982)

PORSCHE 718Cayman(982)

ところがモデルが進化し、718ケイマンになると、ドアにまでエアインテークのデザインが波及するようになっている。

LAUTUS Elise

LAUTUS Elise

エアインテークがドアのデザインにまで波及している例と言えば、エリーゼも大きな存在感がある。いや、ドアの形状だけではなく、サイドシルとドアの形状を上手く組み合わせる事で、非常にダイナミックなデザインを完成させている。

Ferrari F430

Ferrari F430

スーパーカーはどうだろう?MRを作り続けているフェラーリはエアインテークが控えめで、どちらかと言うと主張しない、全体のデザインに溶け込ませる方向だが、かと言って存在感が無い訳でもないバランスを保っている。側面のデザインはアルテガGTにやや似ている様に思える。

McLaren MP4-12C

McLaren MP4-12C

マクラーレンは打って変わって、ダイナミックだ。これでもかというほど、側面のデザインにおいて中心的存在と言っても差し支えないだろう。

Mclaren 540C

Mclaren 540C

MP4-12Cより新しい540Cでは控えめになったものの、やはり側面においての存在感は絶大だ。

Spyker C8 Laviolette

Spyker C8 Laviolette

スパイカー C8も、ショルダー部分にエアインテークがある点では少しアルテガGTに似ている。しかしC8の場合はエアインテークからプレスラインが続いたりはしない。こうして並べると、スパイカーC8の個性が非常に際立つし、コンパクトな車体にあれだけダイナミックなデザインを採用したロータス・エリーゼも凄い。

V12ヴァンテージとアルテガGT

V12ヴァンテージとアルテガGT

…話がすっかり逸れてしまった。
つまり、アルテガGTのサイドからリアにかけてのデザインはそれだけダイナミックなのだという事が言いたかった。目立たぬよう配置する車、デザインの要素として活用する車、色々なアプローチがある。

アルテガGT

デザインの実現

車というのは見た目だけを追求することは難しく、ショーカーだったら美しい車を作れたとしても、いざ市販するとなると市販のための様々なデザイン上の壁があることだろう。ボディのデザインを工夫したくても居住空間も確保しなければならない、量産できるデザインにしなければならない…他にも多くあると思う。その点、アルテガGTはデザインの妥協をあまり感じなかった――デザイナーの技のお陰かもしれないが――。あそこも良い、ここも良い。そればかりだった。この豊かなリアフェンダーなど、特に贅沢だ。

アルテガGTのインテリア

アルテガGTのステアリング

ドアを開け、室内を伺ってみると、アルテガのエンブレムが誇らしげに鎮座したステアリングが目についた。

デルブリュックの紋章

デルブリュックの紋章

これはアルテガのオフィスがあるドイツのデルブリュックのこの紋章をモチーフにしている。ドイツらしいデザインの紋章だ。

アルテガGT

アルテガGTのメーターパネル

グリーンの照明にブルーの指針が特徴的なメーター。

アルテガGTのインテリア

アルテガGTのインテリア

グリーンの照明が魅惑的なインテリア。インテリアは豪華でもなくかと言って質素でもないと言った雰囲気で、ロータスほど簡素ではないがポルシェほど豪華でもない辺りというと、分かる人には分かるかな?ラテンな雰囲気は無く、ドイツ車と言われると納得だが、照明や細かいデザインに遊びがあり、アウディの緻密なデザインとも、メルセデス・ベンツの質実剛健さ(近年はどちらかと言うと派手だが、特に照明が)とも違うアルテガの世界観を確実に作り出していると感じた。

アルテガGTのウインドウスイッチ

ウインドウスイッチ

そんな遊び心のひとつがこれ。パワーウインドウの開閉スイッチなんだけれども、思わず握って回したくなるような手動開閉窓のグリップのようなデザインをしている。しかも先端の丸い部分はタイヤをモチーフにしていて可愛さも倍増である。

これを書いていて思い出す車がしきりにある。それは、Spyker C8 Laviolette.

Spyker C8 Laviolette

Spyker C8 Laviolette

Spyker C8 Laviolette

Spyker C8 Laviolette

インテリアの雰囲気はスポーティで引き締まったアルテガGTと異なり、クラシックで、贅沢で、船の様な雰囲気だ。この2台は全く違う車だが、遊び心のようなマインドにどこか通じるものを感じた。

アルテガGT

ロゴの入った窓

随分話が色々な方向に飛んでしまったが、私はアルテガの車作りが続いて欲しかったし(今も続いていると言えるかもしれないが)、アルテガGTの後継モデルを見てみたかった。私にとって、アルテガGTは多様性の生んだ個性に見えた。

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