フェラーリ GTC4ルッソに試乗した話

今日はフェラーリの話をしてみましょうか。

アストンと一緒に「欧州の高い車」として分類される事もあるイタリアの自動車メーカー(をやっているレース屋さん)、フェラーリ。
メーカーに関する細かい解説なんかはさておき、そこに、GTC4ルッソという車があった。今では後継モデルとして812スーパーファストが君臨している。しかし自ら「スーパーファスト」と名前をつけるとはフェラーリらしい。アストンが「ヴィーナス」とか命名する事が決して無いのとは対照的だ。

このGTC4ルッソは、スポーツモデル(F430、458イタリアあたりのライン)のように車体後部にエンジンがあるのではなく、車体前部にエンジンを搭載する一般的な構造。一般的とは言ったが、そこにあるのはV12エンジンで、しかもそれがしっかりとフロンドミッドシップに配置されている。頑張って詰め込んで車軸より前にエンジンが飛び出ているV12ヴァンテージとは対照的だ。最初からV12エンジンをフロンドミッドシップ搭載する事を考えて造られているだけの事はある。

今回――とは言ってもこれはもう2018年の話になるのだけど――友人がGTC4ルッソを1日借りる機会があり、ありがたい事に一緒にドライブをする事になった。

歌舞伎座前で撮影

歌舞伎座とGTC4ルッソ

歌舞伎座前で記念撮影。
GTC4ルッソは2ドアだがクーペというスタイルでもなく、ハッチバックと言うにも違う。2ドアステーションワゴンと言うのが良いか?こう見えて4人乗りで、今回のドライブも4名乗車で挑んだ。

GTC4ルッソ フロント

フェラーリエンブレムが隠れる

日本のナンバープレートの形状など全く考える素振りのないフロントバンパー形状により、相変わらず馬の誇らしいエンブレムが隠れる。

GTC4ルッソ

ロングノーズ極まる

このボディーカラーは「BronzoMontecarlo」という特注カラー。非常にこの車に似合っていて美しい。

ラゲッジルーム

ラゲッジスペースもしっかりと

GTC4ルッソは大人4名がしっかりと過ごせる居住空間と、ある程度荷物の載るラゲッジスペースがある。フェラーリと言えばミッドシップスポーツモデルというイメージが強いだろうけど、私はこういうモデルの方が魅力を感じる。
これだけの実用性がある洒落た車にV12エンジンが載っていて非常に速い。これは素晴らしい性能だと思わないかい?

高速道路を走るGTC4ルッソ

車幅は広い

全幅は1980mmもあるから流石に幅は広いのが車線の幅と比べてみても分かる。高速道路はGTC4ルッソにとっては主戦場であり、向かうところ敵なし。私は当時の愛車である987ケイマンSで追走していたけれど、ひとたびアクセルを深く踏まれると全く追いつかない。それでいて写真の様に路面状況がウェットになっても安心・安定した走りを提供してくれる。大パワー車でウェットが怖くて踏めないだなんて、GTC4ルッソには不必要な心配だと思った。

GTC4ルッソ

高速道路を矢のように進む

GTC4ルッソのインテリア

美しいコーディネート

フェラーリは、ありとあらゆるインテリアカラーの組み合わせを選ぶ事ができる。これは一見、喜ぶべき事のように思うかも知れないけれど、組み合わせの選択肢が多いという事は選択を間違える可能性も高くなるという事でもある。通常であればメーカーが用意したある程度の選択肢の中から好みの系統を選ぶという形が多いだろうけど、この車の場合はそうではない。だから、目を覆いたくなるようなコンビネーションも、思わず眺めていたくなるようなコンビネーションにする事も可能だ。これは恐ろしいシステムである。

結局「プロが決めた中から選んでね」という方が楽だったりする事も往々にしてあるだろう。きっと、インテリアのコーディネートを決めるのには頭を悩ませる方も多いのだろう。しかし、それをまた楽しむ方も居るだろう。
この車はきっと非常にセンスの良い人物がコーディネートされたのでしょう。ディーラーの車だからセンスに長けた方が居たのだろうか?赤と言っても鮮烈ではないほんの少し穏やかな赤と、絶妙なベージュのコンビネーションが素晴らしい雰囲気を創り出していた。

GTC4ルッソのエンブレム

主張が強い

山奥

渋峠なんだけど…

上信越自動車道を長野県へ向け走り、途中食事を挟みつつ渋峠まで到着したが時刻は19時半を回ろうとしている。随分ヘビーな工程になってしまった。ヘビーと言えば、道路のコンディションもヘビーだった。雨に加えて霧も出る天候で、しかも道には街灯一つも無く、そんな道路を私が先導して走った。
気温も低く雨が降り視界も悪いとなれば運転は疲れるのが一般的だろうが、GTC4ルッソはそうでなかったようだ。友人曰く、全然怖くないし不安も無い。あまり広くない山道でもサイズを気にせず快適に走れた。だとか。私は必死で馬から逃げていたというのに、あちらは余裕だったって事だ…。考えてみればGTC4ルッソは何やら複雑なAWDシステムを搭載していて、ウェットコンディションにおいてはMR後輪駆動よりも有利だったんだろう。

GTC4ルッソ

ワインディングも怖くない

考えてみれば、ほぼ2トンの巨漢が濡れて冷えたしかも落ち葉も多い山道の下りで怖くないというのは恐ろしい事だ。GTC4ルッソには後輪操舵システム(よく言われる4WS)が搭載されていて、それもワインディングでの快適性に繋がったんだろう。

GTC4ルッソ

無事帰京

東京に戻ってきたのは深夜1時頃。渋峠からは草津を掠め、長野原町、そして榛名山を経由して関越道を走った。
たった1日だったがワインディングから高速道路まで、とことん走り抜いたと思う。特にワインディングは広狭様々そして路面がやや荒れた所から整った場所まで多種多様で、GTC4ルッソという車をかなり色々なシチュエーションで体感できたのではないだろうか。

こうして1日を振り返ってみると、本当にGTC4ルッソは魅力的な車だ…。友人は試乗後マジで欲しいと惚れていたし、そうなるのも非常に頷ける。私も欲しい(でもデザインの好みはFF)。
私も帰路の高速道路で運転させて貰ったんだけれど、本当に早かった。これは病みつきになる。もちろん絶対的な出力差がある(GTC4ルッソ:690ps、V12ヴァンテージ:517馬力)からGTC4ルッソの方が速くて当たり前なんだけど、単純な速さだけではなく車全体の感触が非常に良かった。2年程経った今でもあの感触をまた味わいたいと思っている程に素晴らしい。
この試乗の2ヶ月後にV12ヴァンテージを買って現在に至る訳だけれど、それでも尚、この速さや感触は別格だったと言える。音もV12ヴァンテージとはまた違った音で、同じなのは気筒数だけと言っても良いと思う。あれはあれ、これはこれだ。
およそ2トンの車とは思えない、あの高速道路での身動き…忘れられない。

人生初のフェラーリ運転体験がGTC4ルッソだった。そんな忘れられない日の話しでした。

七宝焼エンブレム

お馴染みのエンブレム


ごきげんよう。

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